★★maming4816の京都の行事★★京料理、京菓子ブログ

京都の魅力を伝えます(京の行事と食文化)

❤ Mamingの京都エッセイ❤ vol.7

みなさま、大変ご無沙汰です。5月30日以来のアップで約1月ぶり(6月いっぱいは休業でした)の投稿です。いつもながら、フェイスブックで投稿できなかった内容をこのブログでたっぷり説明しておりますので、ゆっくりご覧ください。

 4月末日からはじまった新型コロナ感染による外出自粛期間中に、ブログの  ≪ Mamingの京都エッセイVol.1 ~ Vol.6 ≫  を投稿しました。この期間で、フェイスブックやブログを見てくださった方々と、京都の食事についていろんな情報を交換しました。情報交換した中でとくに興味深かったのが、食材の「 あらめ 」「 山椒の実 」です。SNS上のコメントのやり取りで大変有意義な “ ご当地あるある ” をいただきましたので、今回は “ 京のおまわり( 京のおばんざい )” 料理の一つである「 あらめとお揚げの炊いたん 」から派生した「 あらめ 」についてご説明します。

さて、5月30日のフェイスブックとブログ「Mamingの京都エッセイVol.6」で、決まった日に決まったおかずを食べる京都の風習で投稿した、6品のおかずを紹介しましたが、そのうちの一品の「 あらめとお揚げの炊いたん 」についていただいた3件のコメントをご紹介いたします。

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あらめとお揚げの炊いたん

  ★あらめのコメント内容

・荒芽(あらめ)を見たことがなくて、京都で見つけた時には感動しました…。

・NHK BSプレミアムで見ましたが…関東では、普通のお店では「あらめ」は見たことがないです。

・本であらめを知り、…京都に来た帰りに…京都でしか手に出来ない食材を買い求めます。あらめもその一つです。

「 見たことがない 」「 京都で買う 」というこのコメントを見たときに、私ははじめて「あらめ」が全国に出回っていないことを知りました。京都では普通にスーパーなどで売られているため、てっきり日本国中で手軽に手に入れられる食材と思い込んでいましたので、これはご当地あるある、京都あるあるだなと感じて、あらめについて調べました(京の台所・錦市場にも行きましたよ)。

★あらめの乾物を調べました!

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乾物のあらめ 伊勢志摩産

 あらめの登場は、平安京ができる前の奈良時代にはすでに存在しています。生産地はほぼ三重県伊勢志摩であることから、なんらかの理由で三重県より西方面へ需要が伸びたのか…。需要が西エリア、主に京都の食材となった背景には、「①天皇家の祖神を祀る伊勢神宮への献上品となったのをはじめ、神様へのお供え物の一つであったこと。②精進料理の食材として、乾物で長期保管ができて、乾物のなかでも水戻りが早いなどの利便性が受け入れられ、寺院が多い京都で普及したこと。③江戸時代には京都の一般庶民にも普及が進み、一般の家庭の神棚や仏壇のお供え、そして縁起を担いだ食べ物としても扱われ、あらめの茹で汁までも、門口に撒けば無病息災の祈願となる風習が根付いた。」といったことが挙げられるでしょうか。

 伊勢志摩でとれる「あらめ」は、社寺仏閣が多かった京都へ需要が大きくなったのですね。あと、昆布の仲間であれば、ほかの昆布でも代用できるのではないかと、錦市場のお店で伺うと、「あらめでない昆布だとネバネバが出てくるのでダメやね。ネバネバが出ないあらめが、おかずに適してるんやね」と言うことでした。昆布の仲間でありながら、ネバネバしなかったのが功を奏じて、京都のおかずに選ばれたのでしょうか。

 

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錦市場 乾物・田邊屋さん 

 

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乾物・田邊屋さんの店頭

≪ あらめ についての詳細 ≫

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ひじきの炊いたん( 調理しても あらめの炊いたんとよく似ている )

❤あらめの属性と産地、栄養価❤

・あらめは昆布の仲間。

・水深5m~10m岩礁地帯に成育。長さ20㎝~1m。葉は平たく根元から二股に分かれている。

伊勢志摩の特産物三重県生産量約200t。生産量のほとんどを占める。

・栄養はアルギン酸、カリウム、カルシウム、フコキサンチン、ヨード、食物繊維を豊富に含む海藻でたんぱく質などが豊富。

・関東ではあまり知られていない。昆布よりはずっと薄く、わかめに近い厚さ。表面がザラザラして荒いため「あらめ」と呼ばれる所以とか。

❤あらめの歴史的登場❤

あらめの登場は、古くは、大宝律令大宝元年701年に制定された日本の律令で、刑法の「律」、律以外の行政「令」で、中国唐の律令を参考にした日本史上初めて律と令が揃って成立した本格的な律令制度 )の時代、奈良の正倉院(奈良の東大寺にある校倉造の高床式倉庫。700年代の第45代聖武天皇光明皇后ゆかりの品をはじめ、天平時代を中心とした多数の美術工芸品を収蔵していた建物)の書物のなかに記述されているとか。また、平安時代の貴族で歌人紀貫之土佐日記にも記述されている。

❤あらめにまつわる京都での風習❤

・あらめの戻し汁を玄関先に撒くと厄除けになり、また、黒い汁で湿らせた布で床を拭くとピカピカになる。床掃除に使われていた。

・昔は旅館や料理屋の女将があらめの茹で汁を「門(かど)」に撒いた。

・8月16日の五山送り火の風習として「追い出しあらめ」がある。8月16日にあらめを炊いて仏壇に供えて、あらめの茹で汁は捨てずに、その茹で汁を門口に撒いて、精霊さんがこの世に未練を残さないようにと冥土へお送りする。

・あらめのゆで汁を走り(流し)の下に撒けば病気にならない、という言い伝えがある。

・めでたい末広がりの「八」のつく日に、商いの「芽(荒芽・あらめ)」が出るようにという願いを掛け合わせた縁起のおかず(京のおまわり)がある。

❤神様へ献上、精進料理にも普及❤

・伊勢志摩では昔から神様のお供え物として伊勢神宮に献上されている。

・伊勢志摩地方の漁師がアラメを茹でて圧縮したものを包丁で刻み干しして仕上げた「刻みあらめ」は、京都方面の寺院に精進料理として取り入れられたのが始まりで、西日本に広がった

・精進料理で重宝された理由は、乾物でありながら調理材料として10分で90%、30分で100%とという早い水戻しができたので便利な食材として使用された。

❤よく似た食材の「ひじき」について紹介❤

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乾物の あらめ と ひじき ラベルが無いと見分けがつかない

あらめと同一視されるのが藻類(そうるい/海藻)の一種の「ひじき」。波の荒い海岸近くの岩場に生息。日本では、古くから「ひじきを食べると長生きする」と言われている。敬老の日にちなみ9月15日を「ひじきの日」としている。日本国内での流通する食用ひじきの約90%が、中国、韓国からの輸入品。うれしいことに、ひじきで豊富に含まれている栄養素のフコキサンチンは脂肪燃焼に効果があるとか…。

 ★日本人と海藻(日本ひじき協議会)

・日本人は古来より海藻をさまざまに利用して生活してきた。

・縄文、弥生時代は遺跡の発掘調査からひじきを食べていた。奈良時代になると、神への供え物「神饌」として使われていた。支配階級の人々はひじきを食していた。伊勢神宮石清水八幡宮賀茂神社をはじめ、多くの神社の神饌には海藻は欠くことができない存在となった。平城京から発掘された書物のなかに、当時の調(税金の一種)として海藻が時の朝廷に献上されていたことが記されている。献上物48中、22が伊勢志摩からの献上物だった。そのなかに「あらめ」もあった。

・戦国時代、海藻は戦場で盛んに食され、武将・加藤清正の熊本城の壁には籠城用食料としてあらめが塗り込められていたという。

・江戸時代になると、品川海苔、浅草海苔が江戸の街に磯の香りを運び、伊勢ひじき、伊勢あらめ、日高昆布、鳴門若布という名産品も出回るようになり、一般庶民も食するようになる。

★日本人と海藻

海藻の記録では、延喜式に朝廷への貢献品としてひじきが記されている。徳川幕府3代将軍家光の時代(寛永20年)に書かれた「寛永料理物語」でひじきの調理法は「にもの、あへもの」と記され、現代と同じような料理方法で食べられていたと想像する。

 

次回は、コメントが多かった「 ちりめん山椒 」について調べてみたいと思います。ご期待ください~。

 

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